行政書士の仕事の範囲は多岐に渡ります。外国人の出入国在留管理に関わる許認可申請もその一つで、今後の外国人労働者受け入れの増加など社会的要因により、依頼も増えていくものと思われます。

一口に在留管理の許認可と言いましても、入国管理に関しては法律にも細かく規定されており、また専門用語や、聞きなれた言葉でありながら意味が正しく理解できていない用語があると思います。今回はそれらの言葉を以下に記して参りたいと思います。

似ているけど違う?査証(さしょう)とビザ(visa)の違い

査証(さしょう)

日本の法律用語で、「入国するために事前に必要な許可の証明」 のことを指します。日本では「出入国管理及び難民認定法(入管法)」に基づき、在外日本大使館・領事館が発給します。

ビザ(visa)

もともとは英語の “visa” ですが、一般的に査証と同じ意味で使われます。ただし、国によって「ビザ」の意味が異なる場合があります。例えば、アメリカではビザが「入国許可」そのものを指しますが、日本では「入国審査を受けるための推薦状」としての役割が強いです。

簡単に言うと

  • 査証(ビザ) は「外国に入国する前に取得するもの」。
  • 日本の査証は、あくまで入国審査を受けるための許可であり、入国の最終判断は入国審査官が行う。
  • ビザなし渡航 とは、特定の国の人が「査証なしで入国審査を受けられる制度」のこと。

つまり、日本では「査証」が正式な法律用語ですが、一般的には「ビザ」という言葉も同じ意味で使われています。

同じじゃないの?上陸許可と在留資格の違い

「上陸許可」と「在留資格」 は、どちらも外国人が日本に入国・滞在するために必要なものですが、役割が異なります。

① 上陸許可とは?

外国人が日本に入国する際、空港や港で 入国審査官が「日本に入っていいですよ」と正式に許可を出すこと を指します。査証(ビザ)を持っていても、この上陸許可がなければ日本に入れません。

  • 入国審査官が、査証の種類や滞在目的を確認
  • 日本の法律(出入国管理法)に適合しているか審査
  • 問題がなければ 「上陸許可」が下りる

つまり、「上陸許可」は日本に足を踏み入れるための最終的な関門 です。

② 在留資格とは?

「在留資格」は、外国人が 日本にどのような目的で、どれくらいの期間滞在できるかを示すもの です。上陸許可を受けた後に与えられます。

在留資格には、就労系(技術・人文知識・国際業務など)、留学(大学や専門学校に通う外国人)、家族滞在(日本に在留している外国人の扶養家族)、永住者(日本に期間制限、活動制限なしで滞在することが許された外国人)などがあります。

 

上陸許可と在留資格の関係

  1. 査証(ビザ)を取得 → まず日本の大使館・領事館で査証を取得
  2. 日本到着時に上陸審査 → 空港や港で入国審査を受ける
  3. 上陸許可が下りる → ここで 在留資格が与えられる
  4. 在留カードの交付(対象者のみ) → 3カ月以上滞在する場合は在留カードを受け取る

つまり、「上陸許可」が下りると、初めて「在留資格」が与えられ、日本での滞在が正式に認められる という関係です。

ポイントをまとめると、
✔ 上陸許可 = 「日本に入るための最終的な許可」
✔ 在留資格 = 「日本でどのような目的で滞在できるかを決めるもの」
✔ 上陸許可が下りると同時に、在留資格が決まる

出入国在留管理庁HPや外務省HPでも在留資格や上陸許可に関する解説があります。

在留資格一覧表|出入国在留管理庁
ビザ・上陸許可について|外務省

特定活動とは|ほかの在留資格に該当しない活動

「特定活動」 は、在留資格の一つで、他の在留資格に該当しない特別な活動をする外国人に与えられるものです。

*法務大臣が個別に指定した活動を行うための在留資格 です。
*「就労資格」などの他の在留資格に当てはまらない場合に適用 されます。
*活動内容によって、就労できるものとできないものがある のが特徴です。

大きく分けて2種類|特定活動の主な種類

特定活動には、大きく分けて 「告示されているもの」「告示されていないもの」 の2種類があります。

① 告示されている特定活動(法務省がリスト化)

すでに法務省の告示(リスト)で定められている活動で、よく使われるものには以下のようなものがあります。

*外交官や公務員の家族
*ワーキングホリデー(対象国の若者が休暇を楽しみながら働ける制度)
*インターンシップ(一定の条件を満たした学生の職業体験)
*高度専門職の家族(家事使用人を帯同する場合など)
* 医療滞在(外国人が長期の医療を受ける場合)

例:「ワーキングホリデー」は 特定活動(告示第5号) という形で指定されています。

② 告示されていない特定活動(個別審査が必要)

法務大臣が個別に特別な事情を考慮して許可する活動です。

*日本人の配偶者や子どもの看護・介護が必要な場合
*難民申請中の一部の人(就労可の場合もあり)
*就職が内定した留学生の「就職活動継続」(留学ビザからの移行)
*外国人のスポーツ選手やアーティストが特定の活動をする場合

:「日本の大学を卒業した外国人が、すぐに就職できない場合に、最長1年間の就職活動を認める特定活動」などがあります。

特定活動のポイントまとめ

✔ 「特定活動」は、他の在留資格に当てはまらない場合に適用される特別な枠
✔ ワーキングホリデー、インターン、医療滞在などの決まったカテゴリーがある(告示されているもの)
✔ 個別に許可されるケースもあり(告示されていないもの)
✔ 就労が許可されるかどうかは、特定活動の種類によって異なる

出入国在留管理庁HPでは、特定活動とはどんなものか解説しています。

在留資格「特定活動」|出入国在留管理庁

特例期間(とくれいきかん)とは|手続き上の猶予期間

「特例期間」とは、通常のルールとは異なる特別な扱いが適用される期間のことです。出入国管理においては、特定の状況において在留資格や出入国手続きに関する特別な猶予期間や適用期間を指します。

特例期間が使われる場面

  1. 在留期間の特例
    • 例えば、法改正や政策変更があった際、既存の在留資格を持つ外国人に対して、一定期間の猶予(特例期間)を設けることがあります。
    • 例:「新しい在留資格制度が導入されるため、既存の資格を持つ人には特例期間が設けられる。」
  2. 出国猶予の特例
    • 不法滞在者が自主的に出国する場合、一定の特例期間内に出国すれば、強制送還の記録をつけないといった措置が取られることがあります。
    • 例:「特例期間内に自主的に出国すれば、再入国禁止措置が軽減されることがある。」
  3. 災害やパンデミック時の特別措置
    • COVID-19の影響などで、帰国が困難になった外国人に対し、特例期間を設けて在留期間の延長を認めることがありました。
    • 例:「帰国便が確保できない外国人に対し、30日間の特例期間が認められた。」

まとめ

「特例期間」は、通常のルールを柔軟に適用するために設けられる特別な期間です。特に在留資格の変更、出国猶予、災害時の特別措置などで使われることが多いです。

在留期間更新許可申請中の特例とは?|申請結果が出るまで待ってもらえる制度

在留資格の更新申請を期限内に行った場合、申請結果が出るまでの間、特例的に日本に滞在できる制度です。

  • 通常、在留資格の更新は在留期限が切れる前に申請する必要があります。
  • 申請を受け付けた後、審査に時間がかかることがあるため、もし在留期限を過ぎても審査中であれば、最長2か月間は合法的に滞在できるという特例が設けられています。

1. 具体的な適用条件

この特例が適用されるには、以下の条件を満たしている必要があります。

*在留期間が満了する前に、適切に更新申請を行っていること。
*審査が完了するまでの間、日本に合法的に滞在する必要があること。
*審査中であることを示す「申請受付票(申請中であることを証明する書類)」を持っていること

2. 特例期間中の就労は可能か?

就労ビザ(例:技術・人文知識・国際業務)の場合、特例期間中も引き続き就労可能です。

  • これは「在留資格更新許可申請中の特例」によるもので、申請が受理されていれば、更新の結果が出るまでは引き続き以前の在留資格に基づいて活動できます。
  • ただし、審査結果が「不許可」になった場合は、速やかに出国する必要があります。

3. 「特例期間」はどのくらい?

在留期限が切れた後でも、更新申請の結果が出るまでの最長2か月間は特例的に滞在が認められます。(※審査が早く終われば、2か月を待たずに新しい在留カードが発行されます。)

4. もし不許可になったら?

更新申請が「不許可」となった場合は、原則としてすぐに出国しなければなりません。ただし、状況によっては**「在留特別許可」**を申請することもできます。

5. まとめ

*在留資格の更新を期限内に申請すれば、審査中は特例的に最長2か月間の滞在が認められる。

*特例期間中も、もとの在留資格の活動(就労など)が継続できる。

* 不許可の場合は、原則として速やかに出国する必要がある。

従って、在留期限ギリギリではなく、早めに更新申請をすることが重要です。

出入国在留管理庁HPにも、特例期間について解説があります。

特例期間とは?|出入国在留管理庁

著者情報|みなと行政書士法人

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