「介護現場で人手が足りなくて困っている」、「外国人材を活用したいが、どのような制度があるかわからない」
このようなお悩みはありませんか?
介護、建設など、エッセンシャルワーカーの多くが不足していると言われている中、外国人介護人材は人手不足解消の解決策の一つといえます。
本記事では、外国人が介護職員として働くための資格にはどんなものがあるのか、それぞれの在留資格ごとの特徴と歴史をご紹介いたします。
この記事を読めば、介護人材として働ける在留資格の特徴を理解でき、採用したい外国人材に、どの在留資格を取得してもらえばよいか判断できるようになります。
今後、外国人介護人材を効果的に活用できるようになるためにも、是非最後までお読みください。
外国人介護人材として働くための在留資格(ビザ)とは?
在留資格名 | 主な特徴 | 在留期間 | 家族帯同 |
在留資格「介護」 | 介護福祉士の国家資格取得者が対象。就労先や業務内容の幅が広く、在留期間の制限なし。 | 無制限(更新可) | 可能 |
特定技能1号「介護」 | 技能試験と日本語試験に合格した者が対象。最長5年まで在留可能。訪問介護は不可。 | 最長5年 | 不可 |
技能実習「介護」 | 技能実習制度に基づき、開発途上国の人材育成を目的。最長5年。一定の日本語能力が必要。 | 最長5年 | 不可 |
特定活動(EPA介護福祉士候補者) | EPA協定国(インドネシア、フィリピン、ベトナム)からの候補者。原則4年間で国家資格取得を目指す。 | 原則4年 | 不可(合格後は可) |
外国人介護人材として働くための在留資格(ビザ)とは、どんなビザなのでしょうか。
実は、外国人介護人材として働けるビザは1つに限られているわけではなく、複数の在留資格から、外国人ごとに合ったものを選んで働くことができます。
介護として働ける在留資格は、「介護」、「特定技能」、「技能実習」、「特定活動」の4種類です。
ここからは、それぞれの在留資格ごとの特徴をご紹介します。
在留資格「介護」
在留資格「介護」とは、介護福祉士の国家資格を取得した外国人が対象の在留資格です。就労先も幅広く、家族の帯同も認められます。
特定技能「介護」
特定技能は技能試験と日本語試験の合格が必要ですが、最長5年まで在留可能です。ただし家族帯同は不可です。
技能実習「介護」
技能実習生として最大5年まで働けます。日本語能力の要件があり、将来的に特定技能や在留資格「介護」への移行も可能です。
特定活動(EPA介護福祉士候補者)
EPAに基づき、指定国から来日します。4年間で介護福祉士国家試験合格を目指します。合格後は在留資格「介護」へ変更でき、家族帯同も可能となります。
外国人介護人材ビザの種類別メリット・デメリット
在留資格名 | メリット | デメリット |
介護ビザ(在留資格「介護」) | ・介護福祉士資格取得者なら国籍問わず申請可能 ・在留期間の上限なし、更新可能 ・家族帯同可 ・就労先や業務内容の制限が少ない |
・介護福祉士資格の取得が必須(ハードルが高い) ・資格取得までの時間とコストがかかる |
EPA(特定活動) | ・候補者は母国で一定の教育・資格を持つため即戦力性が高い ・国家試験合格後は介護ビザに移行可能 ・サポート体制が整っている |
・対象国がインドネシア・フィリピン・ベトナムの3カ国のみ ・国家試験不合格の場合は原則帰国 ・受け入れ人数枠がある |
技能実習 | ・開発途上国の人材育成が目的で、比較的受け入れやすい ・一定の日本語能力で応募可能 |
・在留期間は最長5年 ・訪問介護は不可 ・人員配置基準に6ヶ月間算入不可 ・技能移転が主目的で永続的雇用は不可 |
特定技能1号 | ・試験合格で在留可能、幅広い国籍が対象 ・配属後すぐ人員配置基準に算入できる ・最長5年就労可能 |
・在留期間は最長5年で更新不可 ・家族帯同不可 ・訪問介護は不可 |
先ほどは、外国人介護人材として働ける在留資格(ビザ)ごとの特徴についてお伝えしました。
ですが、それだけではどの在留資格を選んだらよいかわからないと思います。
そこで、外国人介護人材として働ける在留資格の種類ごとに、それぞれのメリット、デメリットをご紹介します。
【介護ビザ(在留資格「介護」)】制限は少ないが、高いスキルが必要
介護福祉士の国家資格を取得した外国人が対象です。就労・在留に大きな制限がないので、長期間日本に在留したい外国人にはぴったりの在留資格です。
ただし、資格取得までに日本語能力や専門知識が必要です。日本語能力が低かったり、介護人材としてのスキルが低かったりすると、在留資格取得が難しい場合があります。
向いている人:介護福祉士の国家試験に合格しており、長く日本で働きたい外国人
【EPA(特定活動)】指定国なら活用できる在留資格
インドネシア・フィリピン・ベトナムの3カ国限定の在留資格です。候補者は一定の教育・資格を持っているので、即戦力として活躍が期待できます。
介護福祉士の国家試験に合格できれば、先ほどご紹介した、在留資格「介護」に移行できます。
ただし、国家試験に合格しない場合は原則帰国となってしまいます。
また、受け入れ人数枠も設定されているので、狭き門と言えるでしょう。
向いている人:インドネシア・フィリピン・ベトナムのいずれかの国の人。
【技能実習】自社の受け入れ体制があるならおすすめ
日本語要件や介護人材としてのスキルの要件が低いので、外国人の要件を満たしやすい在留資格です。
その反面、企業側は技能実習計画を立てたり、監理団体や送り出し機関との連携が必要になったりと、手続き上で大変な面もあります。
また、在留期間や就労範囲に制限があるので、長い期間働いてもらうことは難しいです。
ただし、実習生との信頼関係が築ければ、特定技能などの在留資格に変更することで、長く働いてもらうこともできるでしょう。
配属後6ヶ月間は介護における人員配置基準に算入できない点も注意が必要です。
向いている人:教育体制が整っているので、外国人材を雇ってみたい企業。スキルは低いが、日本で働いてみたい外国人。
【特定技能】一定のスキルと日本語能力がある外国人介護人材
技能試験・日本語試験合格で幅広い国から受け入れ可能な在留資格です。技能実習と違い、配属後すぐ人員配置基準に算入できる点もメリットです。
しかし、在留期間は最長5年ですので、長期雇用には向きません。
また、家族帯同はできないので、家族と一緒に日本で暮らしたい外国人には向きません。
向いている人:長期間でなくても良いので外国人介護人材がほしい企業。ある程度の技能や日本語能力がある、日本で働いてみたい外国人。
このように各ビザは目的や要件、就労範囲、在留期間に違いがあるため、施設や本人の希望に応じて最適な選択が求められます。
外国人介護人材は日本で長く働けるのか?
せっかく外国人介護士を受け入れても、長く働いてもらえなければ、人手不足を解消することはできませんよね。
外国人介護士で長期間働ける人材は日本にどのくらいいるのでしょうか。
ここからは、実際のデータをもとに、外国人材活用の実情をお伝えします。
厚生労働省のデータによると、期間制限なく介護職員として働ける外国人は約1万人と推定されています。
このうち、在留資格「介護」を取得し、介護福祉士の資格を取得した人は約9,300人です。残りの外国人介護士は、EPAの制度で来日し、介護福祉士国家試験に合格した人々です。
しかし、介護福祉士の国家試験は非常に難しく、試験に合格できずに帰国せざるを得なかった人も多いとされています。
外国人介護人材受け入れの歴史
さて、外国人介護人材の受け入れは、いつ頃から始まったのでしょうか。
外国人介護人材の受け入れは、EPA(経済連携協定)を通じて始まりました。
EPAは、単なる貿易自由化にとどまらず、経済全体の連携や協力を深めるための国際的な枠組みです。
2008年にインドネシア人の受け入れが開始され、その後、2009年にフィリピン、2014年にはベトナムと続きました。
当初、EPAの制度では受け入れ人数が限られており、さらに介護福祉士国家試験の合格が求められるなど、高いハードルがありました。
インドネシア、フィリピン及びベトナムからの外国人看護師・介護福祉士候補者の受入れについて|厚生労働省
EPA制度以外にも新たな外国人介護人材に関する制度が追加される
しかし、2017年に「介護」の在留資格が新設され、同年、技能実習制度にも「介護」分野が追加されました。
さらに2019年には、「特定技能1号」という新たな在留資格が創設され、外国人労働者が介護分野で働ける道が広がりました。
現在、特定技能1号の在留資格を持つ外国人介護士が最も多く、厚生労働省のデータによると、2023年12月末時点で28,400人に達し、外国人介護職員全体の約42%を占めています。
ただし、特定技能1号は最長5年間の在留資格であり、より長く日本で働き続けるためには、介護福祉士国家試験に合格し、「介護」の在留資格へ変更する必要があります。
技能実習生・特定技能「介護」資格
ここからは、技能実習、特定技能の歴史についてご紹介します。
外国人技能実習生の「介護」資格による受け入れは2017年に始まり、特定技能1号の在留資格による受け入れは2019年に開始されました。
入管庁の資料によると、2023年度末時点で、日本で働く外国人介護士の数は以下のとおりです。
- 技能実習生:15,909人
- 特定技能1号:28,400人
合計すると4万人を超え、介護福祉士の資格を持つ外国人介護士の約4倍に達しています。
ただし、技能実習生は本来、日本で学んだ技術を母国で生かすことを目的とした制度であるため、実習期間中は監理団体の支援が必要であり、最長5年間の在留となります。
一方、特定技能1号は、日本の人手不足を補うための制度であり、企業にとっては貴重な労働力ですが、特定の条件を満たした介護施設でのみ受け入れが可能です。
例えば、特定技能の外国人介護人材を受け入れられない有料老人ホームがあったり、訪問介護が認められていなかったりするなど、現行制度には制約があります。
今後の外国人介護人材に関する制度の見直しについて
先ほどもお話ししたとおり、現行の制度には制約があり、外国人介護人材をフルに活用できていないのが現状です。
このことを踏まえて、外国人介護人材に関する制度はどのように変わっていくのでしょうか。
2025年4月から、技能実習生および特定技能1号の外国人介護士に対して、訪問介護が解禁されることが政府から発表されました。この要件緩和により、多くの介護事業者が期待を寄せています。
今後、介護職員の必要性がますます高まる中で、政府によるさらなる規制緩和が進む可能性があります。外国人介護士の数が増え、彼らが日本の高齢化社会を支える重要な存在になっていくことが予想されます。
今のうちに、外国人介護人材受け入れのために、在留資格の理解や受け入れ体制の整備などの準備をしておくことをおすすめします。
著者情報:みなと行政書士法人
外国人の在留・ビザ・帰化手続きに強い行政書士法人。英語・中国語・ベトナム語・インドネシア語対応・全国対応で、外国人の方の日本での生活をサポートしています。
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