「日本で働く外国人の“実習生”たちは、これからどうなるの?」

2024年の入管法改正で創設される「育成就労制度」は、技能実習制度の問題点を見直し、より実態に即した外国人労働の受け入れ制度を目指すものです。

本記事では、技能実習制度の歩みと課題、そして新たな制度「育成就労制度」の内容と今後の展望について、やさしく解説します。

制度の変化が、現場で働く人たちや企業にどのような影響をもたらすのか、一緒に考えてみませんか?

技能実習制度とは?

技能実習制度の本来の趣旨は「国際貢献」

技能実習制度(ぎのうじっしゅうせいど)は、外国人が日本で一定期間、実務を通じて技能や知識を学び、母国の経済発展に役立てることを目的として1993年に創設されました。

本来の趣旨は主に発展途上国に対する「国際貢献」ですが、実際には日本の企業が人手不足を補う手段として機能している側面がありました。

技能実習生が多い国籍や人数は?

技能実習生の国籍で一番多いのはベトナム、次いでインドネシア、フィリピン、中国の順になっています。(令和5年10月末時点)

また、在留資格別の外国人数でも、永住者の約90万人に次ぐ数で約43万人となっています。(令和6年6月末現在)

技能実習で雇用契約が義務化されたのは2010年から

技能実習制度が創設されたのは、1993年。

ですが、技能実習生が雇用契約に基づいて技能等を修得する活動を行うことが義務化されたのは、2010年7月の入管法改正からです。

そして、外国人技能実習機構(OTIT)が設立され、技能実習の適正な実施と技能実習生の保護に関する法律の施行がスタートしたのが、2017年11月でした。

技能実習制度の問題点

「人手不足」解消のために制度が使われている

制度の目的としては、母国への技術移転のための「研修」です。

しかし、実際には主にに中小企業の「人手不足」の解消のために制度が使われているという実態も。

労働法の保護もなく、安価な労働力として使われ、賃金の未払いや長時間労働の問題もありました。

技能実習生の失踪

また、原則として受入企業を変更できないため、技能実習生の失踪などの問題も出てきておりました。

ただ、近年、技能実習制度についての法整備も進み、OTITの監査もあり、技能実習生の保護体制も進み、問題となる事案も減ってきておりました。

 

育成就労制度の創設

育成就労制度の目的は、特定技能の人材育成

技能実習制度の様々な問題点、矛盾点の解消のため、2024年6月の入管法改正により、新たに「育成就労制度」が創設されることになりました。

技能実習制度が母国への技術移転を目的にしていたのに対し、育成就労制度の目的は、特定技能1号水準の技能を有する人材を育成し、確保していくことにあります。

育成就労制度では、特定技能の職種に準ずる

対象職種も技能実習制度と特定技能の間にはミスマッチがあり、技能実習で学んだ職種が特定技能には無く、帰国せざるを得なかった例も多かったように思います。

ですが、育成就労制度の対象職種は、特定技能制度の職種に準ずるということなので、長期に亘っての継続労働も可能になってくると思います。

 

技能実習制度と育成就労制度の違い

 

技能実習制度 育成就労制度
目的 母国への技能移転 特定技能に移行できる人材の育成。人手不足の解消。
在留期間 3年から最長5年 3年
日本語能力の条件 介護のみN4必要 N5
転職の可否 不可 条件付きで可能
サポート団体 監理団体 監理支援機関
職種について 特定技能とのミスマッチあり。 特定技能1号に準ずる。

 

技能実習制度から育成就労制度への移行

技能実習制度は廃止へ

育成就労制度の創設が決められた改正入管法は、令和6年(2024年)6月21日に公布されました。

この法律が施行されるのは公布日から起算して3年以内になりますので、令和9年(2027年)6月ころに施行になると思われます。

2027年6月以降でも技能実習の期間が残っている場合は、そのまま継続して技能実習生としての活動が可能だということですが、その後の更新などはできなくなると思います。

監理団体は新たに監理支援機関としての許可が必要

また、監理団体としての活動も育成就労生を受け入れるのは、新たに監理支援機関としての許可を得る必要があるでしょう。

この移行期間に技能実習生や監理団体が不利益を被ることがないように、行政には移行がスムーズに行くように制度設計をしっかりと進めて頂きたく思います。

お問い合わせ

関連記事